圧倒的成長を続けているNotaでのドッグフーディングによるGyazoの改善

nota.gyazo.com

こんにちは。Nota株式会社でGyazoのプロジェクトマネージャー兼ソフトウェアエンジニアをしている id:yuiseki です。

この記事はNota Advent Calendar 2021の21日目の記事です。

本当は19日目だったんですが、見事に締め切りに間に合わず、順番を入れ替えていただきました……。申し訳ありません!

今日は、Notaでのソフトウェア開発におけるドッグフーディングとオンボーディング観察によるプロダクトの改善という取り組みについてご紹介します。

Gyazoについて

Gyazoについて知らない方もいるかも知れないので、簡単に紹介させてください。

Gyazoは2007年9月にファーストバージョンがリリースされたプロダクトで、当時は「スクリーンショットの瞬間共有」を実現するソフトウェアでした。 「スクリーンショットの瞬間共有」とは、Gyazoアプリを起動する、範囲選択する、それだけでクラウドにアップロードされて、画像固有のURLが生成されてクリップボードに入り、あとはそれを共有したい他人に送るだけで共有が完了する、ということです。

いまではOSのスクリーンショット機能も範囲選択などができるようになったり各OSに公式のクラウドストレージサービスが統合されるなど進化しつつありますが、2007年当時はこの「範囲選択するだけでアップロードされてURLが生成されて共有できる」というアイデアは非常に画期的でした。

2021年でのGyazoは、「スクリーンショットの瞬間共有」を超えた「画像の瞬間発見」への進化を実現しようとしていました。 Gyazoの強みは、スクリーンショットツールとしての使いやすさはもちろんですが、クラウド上に蓄積された画像の検索機能にあるということで、そこをもっと強化しようというわけです。 詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

scrapbox.io

この一年間は、スクリーンショットのみならず、写真なども含めたあらゆる画像情報の蓄積と素早い発見が可能なツールへの進化を目指して、様々な機能を開発してきました。

これらの「画像の瞬間発見」機能を活用できるのは Gyazoの有料版であるGyazo Proユーザーのみ ですが、 1ヶ月間の無料のProトライアルができます ので、もしこのブログを御覧のなかでGyazoを無料で使っている方がいましたら、この機会に是非お試し下さい。

2022年のGyazoはさらに強力な知的生産ツールとして進化するべく計画中ですが、その詳細はまた別の機会にご紹介したいと思います。ご期待ください!

ドッグフーディングの文化

本題に入ります。

Notaではドッグフーディングを非常に重視しています。 ドッグフーディングとは、Wikipediaによると、以下のような意味があります。

ドッグフーディング (英: dogfooding) または「自社のドッグフードを食べる」「ドッグフードする」(Eating your own dog food、Drinking your own champagneとも言う)は、コンピュータ業界において、自社製品を開発して利用する組織の習慣で、組織が実際の使用法で日々自分たちで製品を利用しながら製品テストを行うことである。日本語では単に「ドッグフード」ということもある。そのため、ドッグフーディングは品質管理として機能し、開発者自身による製品の自信を表す証言広告となる。尚、日本企業では自社実践(じしゃじっせん)という言葉が相当する意味の言葉として使われている。

ドッグフーディング - Wikipedia

つまり 自分たちが開発・運用・販売している製品を、自分たち自身でガンガン使おうぜ! ということですね。

また、私はドッグフーディング自分が関わっている製品を自分自身で使っていて不便に感じた所を改善したり、もっとこういう機能があったら良いのにと思ったらそれを実装していこうぜ! ということだとも考えています。

ドッグフーディングという言葉自体はソフトウェア開発において使われる言葉ですが、「自分が作った製品の品質を身を持って示せ」ということは、実は古代から言われていました。

ローマ時代のエンジニアは、自分の建てた橋の下でしばらく過ごさなければならなかった。

反脆弱性[下]――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方 | ナシーム・ニコラス・タレブ, 望月 衛, 千葉 敏生 | ビジネス・経済 | Kindleストア | Amazon

やはり、自分自身で使っていない製品を自信ありげに他人に売る人は信用ならないということは、古代から変わらないようです。

ドッグフーディングによるフィードバックと改善事例

Nota社内におけるドッグフーディングを通じたGyazoの改善事例をいくつかご紹介したいと思います。

パフォーマンスの改善

つい最近のリリースで、Gyazoにおける、画像個別ページでの、前後の画像への移動が高速化しました。 また、実はそれ以外にも、画像一覧読み込みや検索結果読み込み、関連画像の読み込みなど、かなり広い範囲が高速化しています。

これは社内で「Gyazoを使っていて、前後の画像への移動がとても遅いんですが……」というフィードバックを頂いたことがキッカケで調査を開始し、 特定の条件下で、画像のデータを含むJSON非常に 巨大になっていることでJSONの組み立てや通信が遅くなってしまっているという原因を特定し、 JSONに無駄なデータを含まないようにコンパクトにしたことで高速化が実現できたという事例です。

さらに、前後の画像へ次々と移動した際に、関連画像のリクエストを中断するといった処理もするようにしました。

その他にも、つい最近のリリースで、設定画面の表示も高速化しています。 これは、数万枚の画像をアップロードしているユーザーの場合、画像のカウント処理が非常に遅いことが原因でした。

表示速度は日々使っているうえで体験として非常に重要なので、こうした改善によって自分たちはもちろん世界中のGyazoユーザーの体験が向上しています。

検索履歴のアイコン表示

2021年10月末ごろにリリースされた検索履歴のアイコン表示機能も、ドッグフーディングの過程で生まれました。

そもそも検索履歴機能も、検索機能を強化していきながら、 ドッグフーディングの過程で「いや、検索履歴は欲しいでしょ」と思って実装し、リリースした機能ですが、 日々検索履歴機能を使う中で、大量の検索履歴文字列だけが並んでいる状態では検索したいキーワードをすぐに探し出せないということが気になって、 試行錯誤の末にリリースした機能です。

gyazo.com

この機能を追加したおかげで、検索履歴に、気になった検索キーワードを保存しておくことが一層楽しくなりました。 みなさんも是非、検索履歴機能を使ってみて下さい。

gyazo.com

ドッグフーディングの文化:まとめ

このように、Notaではトップダウンでの製品開発計画を進めるだけではなく、 日々、自分たち自身で製品を徹底的に使いまくり、 そこで気づいた問題点を改善したり、新しい機能を追加したりしています。

自分たち自身が最大のヘビーユーザーであるということで、 ユーザー様にも自信を持ってオススメできるし、 問題が発生してしまったら困るのは毎日使っている自分たちということでもあるので、 安定して運用し、問題のある点については改善していく大きなモチベーションとなっています。

オンボーディング観察会

ドッグフーディングの一環として、 Notaでは新しく入社された社員の方へのオンボーディングで、 自社製品を積極的に使ってくださいとお願いしています。

オンボーディングの過程でScrapboxGyazoのアカウントを作って使い始めていただくわけですが、 Gyazo開発チームでは、Gyazoを使い始める際に同席してその様子を観察させていただくことにしました。

毎日使っているヘビーユーザーだと慣れてしまって、 Gyazoを一番最初に使い始める際のわかりにくい点や使いにくい点に気づけなくなりがちです。

Gyazoを初めて使う方の様子を観察させていただくことによって、 ダウンロードしてから使い始めるまでのプロセスで問題のある点がないかを探ろうという意図です。

Gyazo開発チームでは、これを「オンボーディング観察会」と呼んでいます。

Notaは現在、圧倒的成長を続けており、一ヶ月に1人以上の方が入社してきますので、 毎月このオンボーディング観察会が実施できています。

オンボーディング観察会の具体的な流れ

Gyazo開発チームにおけるオンボーディング観察会の基本的なシナリオをご紹介します。

※以下の内容な2021年12月時点のものであり、このシナリオ自体も改善していく可能性があります。

  • 最初に以下を教えて下さい
    • OS
    • ブラウザ
    • Gyazo利用経験
  • あなたはいまスクリーンショットを同僚と共有したいと思っています
  • スクリーンショットのページに、Gyazoの有料プランを無料で試せるバナーが表示されています。そこからトライアルを初めてみてください
  • あなたはスクリーンショットに矢印を書き込んで同僚と共有したいと思っています
    • 矢印を書く機能があるので、画像に矢印を書き込んでみてください
    • その画像をSlackで共有してください
  • あなたは過去に撮影したスクリーンショットをキーワードで探し出したいと思っています
    • 検索機能があるので、検索してみてください
  • 以上です。お疲れ様でした

このようなシナリオに基づいてGyazoを使ってみていただき、その様子を観察しています。

オンボーディング観察会による改善事例

オンボーディング観察会で得られたわかりにくい点・使いにくい点から実際に改善した事例をいくつかご紹介します。

一覧画面から前の画像個別ページに戻れない問題

Gyazoは基本的にはアプリをダウンロードするだけで、 ユーザー登録しなくてもスクリーンショットの共有に使うことができます。 しかし、ユーザー登録しなければ、 画像一覧で画像が一覧表示されるが1枚もクリックすることはできないという仕様になっていました。

これはつまり、一番最初のステップ、スクリーンショットを撮って共有する際に、 まずはスクリーンショットした画像の画像個別ページが開くのですが、 そこで誤クリックするなどでウッカリGyazoの画像一覧ページに移動してしまうと、 ユーザー登録していないので画面上にはもとの画像個別ページに戻る動線が存在しないということになります。

この結果、「さっきの画像ページに戻るにはどうしたらいいんだろう?」となってしまう場合があるということがわかりました。

(もちろんブラウザの戻るボタンや閲覧履歴を使えば良いという話はありますが、サービスとして、画面上に動線が存在していないのは、たしかにわかりにくいと言えるでしょう)

この問題に対する解決策として、 ユーザー登録していなくても画像一覧ページで10枚まではクリックできるようにする という仕様変更を行いました。

OCR機能に気づけない問題

GyazoがOS標準のスクリーンショットよりも優れているポイントとして、OCRによって画像内の文字列をテキストデータとして取得できる、という機能があります。 このOCR結果は、Gyazoの検索機能でも検索対象になるため、非常に重要であり、便利な機能です。

しかし、オンボーディング観察をした結果、このOCR機能が、Proトライアルを始めた際に有効になっていないということに気づくことができました。

いまではProトライアルを開始した時点で自動的にOCR機能が有効になるように修正したため、Gyazo Proユーザーにより近い状態で、一ヶ月ほとんどすべてのPro機能を試していただけるようになりました。

オンボーディング観察会:まとめ

このように、Notaに新しく入社された方を対象にオンボーディングの様子を観察させていただいて、 Gyazoを初めて使う方でもよりわかりやすく、使いやすいように改善しています。

実は他にもオンボーディング観察会で発見できたものの、まだ改善に至っていない問題もいくつかあります。 今後も引き続きオンボーディング観察会とそれに基づいた改善を続けていき、 さらにわかりやすく使いやすいツールを目指していきたいと思います。

おわりに

今日は、Notaでのドッグフーディングの文化とオンボーディング観察会によるGyazoの改善についてご紹介しました。

ドッグフーディングで自分たち自身が最大のヘビーユーザーになるということは製品の品質を保証するだけではなく、製品の持つ新たな可能性を探る、イノベーションという視点でも非常に重要です。

しかし、一度ヘビーユーザーになってしまうと、往々にして製品のわかりにくい点や使いにくい点に慣れて適応してしまい、製品を初めて使うユーザーの視点で考えることが難しくなりがちです。

製品を初めて使うユーザーの視点に立った使いやすさの改善という点では、今年はオンボーディング観察会を手探り状態の段階から始めて、回を重ねるごとにオンボーディング観察会のやり方自体を改善しつつ、なんとか継続的に製品の改善につなげる取り組みになってきていて、とても良かったと思っています。

そして重要なお知らせです!!

Nota株式会社、そしてGyazo開発チームでは、 こうしたドッグフーディングの文化に共感していただけて一緒に開発したい!! というソフトウェアエンジニアを絶賛募集中です。

まずはカジュアル面談で私とお話してみませんか? 以下のリンクからご応募お待ちしております。

【全職種】カジュアル面談 - Nota株式会社

えーっと……締め切りをぶっちぎってしまったことによって順番が変わるらしく、明日は誰が何を書いてくれるのかがちょっとわかりませんが……、きっと誰かが素敵な記事を書いてくれると思います!!よろしくお願いします!!!